お知らせ

すい臓がんの症例報告①

 

手術不能の4a期の膵がんに対して免疫細胞療法と化学療法の併用治療により手術可能となり、6年間、再発なく経過しているケース
※ LSI札幌クリニックは、瀬田クリニックグループの(特定連携医療機関)として医療連携を行っております。

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1.治療までの経緯

2014年春、上腹部の痛みを感じ検査を受けたところ、膵体部癌と診断されました。 膵臓にできたがんは周囲の大きな血管を巻き込んでいるため手術ができないことから、化学療法で治療する方針となりました。すぐにジェムザールとティーエスワンによる化学療法が開始されました。しかし、手術不能な膵がんは化学療法だけでは予後は非常に厳しいため、医師である夫の勧めもあり、免疫細胞療法と化学療法を併用することになりました。化学療法開始から1ヶ月後、当院を受診されました。

2.治療内容と経過

生検が行われておらず、がん細胞の抗原の検査を行えないため、免疫細胞療法としてアルファ・ベータT細胞療法を選択し、化学療法と併用で治療を進めました。経過によっては樹状細胞ワクチンを予定していましたが、腫瘍マーカーであるCA19-9は順調に下降し、治療開始から約6ヶ月後のCTで腫瘍は画像上ほぼ見えなくなるレベルまで縮小していました。

そのため、治療法は変更せず、化学療法(ジェムザールとティーエスワン)とアルファ・ベータT細胞療法の併用治療を継続しました。治療開始してから9ヶ月経った2015年のPET-CTでは腫瘍のあった部位にはFDGの取り込みも見られませんでした。
その結果をもって、手術を行う方針とし、さらに放射線治療を28回施行しました。治療開始後1年で化学療法も終了として、手術を実施しました。膵体尾部切除術により切除、手術後の病理診断では低分化腺がんでした。切除断端にはがんは存在せず、がん組織の切除は十分に行われていました。
その後は化学療法等は行わず、3ヶ月間隔でCTなどで経過観察していますが、2019年末の時点で再発なく、診断から6年、手術から5年以上経過しますがお元気で過ごしています。

3.考察

切除不能な進行した膵がんに対しては全身治療である化学療法を中心に治療が行われています。全身治療や放射線治療の効果によりがんの十分な縮小が見られた場合、手術が行われる場合があります(Conversion surgeryといいます)。

このケースでも化学療法と免疫細胞療法の結果、手術可能な状況となり、実行されました。幸い、この患者さんの場合は手術後の後遺障害もほとんどなく、5年以上経過した現在、再発もなくお元気に暮らしています。

恐らく今後も再発することなく、膵がんは治癒に至るものと思います。病理検査では切除した組織には疎らに低分化の腺がんが残存していました。したがって、化学療法、免疫細胞療法、放射線治療のみではがん細胞をゼロにすることができておらず、手術に踏み切ったことが奏功したものと考えられます。

また、膵がんの化学療法は終了することなく続けられる場合も少なくありませんが、その場合、蓄積する副作用に悩まされることにもなります。このケースでは手術を契機に化学療法を終了することができました。これも、患者さんのその後の生活の質、レベルを大きく改善することができたのだと思います。

Conversion surgeryが行われた場合でも、膵がんではその後の再発も多く、手術で治癒させるにはいかに全身治療を効果的に行うかにかかっています。その点からも化学療法のみでなく、免疫細胞療法を併用することの意義を検証していきたいと考えます。

瀬田クリニックグループの症例報告を元に作成(https://www.j-immunother.com/case/

4.症例報告のエビデンスレベル

※エビデンスとは

エビデンス(evidence)は日本語で「証拠」「根拠」という意味を指します。
医療の分野では症例に対して科学的に示した成果のことで、科学的根拠や裏付けとして使われます。

国立がんセンター情報サービスの記載を元に作成(http://ganjoho.jp/med_pro/med_info/guideline/guideline.html

※がん免疫細胞療法について
がん免疫細胞療法とは、身体のなかでがん細胞などの異物と闘ってくれる免疫細胞を患者さんの血液から取り出し、人工的に数を増やしたり、効率的にがんを攻撃するよう教育してから再び体内へ戻すことで、免疫の力でがんを攻撃する治療法です。この治療は患者さんがもともと体内に有している免疫細胞を培養・加工してがんを攻撃する点から、他の治療のような大きな副作用はなく、また抗がん剤や手術、放射線治療など他の治療と組み合わせて行うこともできます。治療の種類にもよりますが基本的には2週間おきに採血と点滴を繰り返す治療となります。当院では、治療に用いる細胞の違いや培養方法の違いにより、樹状細胞ワクチン、アルファ・ベータT細胞療法、ガンマ・デルタT細胞療法、NK細胞療法の四つの治療法を提供しています。


※リスク・副作用について:治療後、ごく稀に「軽い発熱、発疹等、倦怠感」が見られる事がありますが、それ以外、重篤な副作用は見られたことはありません。身体への負担が最小限の治療と考えています。

※治療費について:治療法にもよりますが、1種類の治療を1クール(6回)実施の場合、1,639,200円(税込1,803,120円)~2,239,200円(税込2,463,120円)が目安となります(検査費用は除く)。治療費の詳細はこちら