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変異ウイルスの攻略に注目される免疫「T細胞」

 

LSI札幌クリニックです。
いまだ新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の油断が出来ない状況の中、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は、ワクチン等で得られる抗体(液性免疫)と並ぶ、強い攻撃力を発揮する細胞性免疫の主役「T細胞」について説明したいと思います。

1.変異ウイルスの攻略に注目される、強い攻撃力を持つ免疫「T細胞」

T細胞は細胞性免疫と呼ばれ、細胞自体がウイルスを攻撃する免疫です。

抗体はウイルスの体内侵入を防御しますが、ウイルスが体内に侵入した場合、このT細胞がメインに働き、ウイルスに感染した細胞を見つけて破壊します。

T細胞は強い攻撃力を持つ免疫細胞で、感染した細胞を全て破壊することで重篤化を防いでいます。

2.抗体がすり抜けやすいオミクロン株。「BA.5株」の伝播力は第六波の1.2倍

強い予防効果が期待されたワクチンによる抗体(液性免疫)ですが、オミクロン株はスパイクタンパクに約30個もの変異が認められ、抗体がすり抜けやすい特徴があるため、従来型のワクチンの予防効果が低下しているとの事です。

特に今の「BA.5株」は第六波に流行した「BA.2株」と比べても、およそ1.2倍の伝染力があるとの事。

先日の厚生労働省の専門家会合でオミクロン「BA.5株」に対する発症予防効果を推定したところ、2回目接種の6カ月後で11.4%3回目接種の2週後で48.5%との報告がありました。



3.T細胞の攻撃力はオミクロン「BA.5株」でも低下しない

一方、T細胞は、スパイクタンパクを抗体よりもはるかに多く認識できるので、オミクロン株「BA・5」の変異がたくさんあるような場合でも、T細胞の攻撃力は低下しません。

4.持続するT細胞

ワクチンは接種から時間がたつにつれ抗体レベルは低下していきます。新型コロナウイルスのファイザー社のワクチンデータを見ると、ワクチン接種6か月後の抗体価ピーク時(接種1〜3週後)と比べ約90%減少するデータという報告されています。

そんな、T細胞には、抗体ほど迅速に低下する傾向は見られなく、持続する特徴も兼ね揃えています。

 

5.T細胞は新型コロナ克服のために日々研究されています。

治療用のキラーT細胞を人工的に作る試みが国内でも進んでいます。
京都大学ウイルス・再生医科学研究所、藤田医科大などでは2~3年後の実用化を目指し、iPS細胞を用いたキラーT細胞作製に取り組んでいます。

私たちの体の防御システム、免疫の要となる「T細胞」は、変異ウイルス撃退のカギとして新型コロナ克服のために日々、研究されています。