免疫細胞療法と生活の質(QOL)②

前回のブログに続き、免疫細胞療法について報告された論文をご紹介します。
今回は、患者さんの身体状態や治療後の経過などについて報告された研究を取り上げます。
【論文紹介4】NK細胞を用いた免疫細胞療法
【論文】Targeted Natural Killer Cell-Based Adoptive Immunotherapy
【研究機関】ミュンヘン工科大学など/ドイツ
【研究概要】
2020年に発表されたこの研究では、切除不能のステージIII非小細胞肺がん患者を対象に、放射線化学療法に免疫細胞療法を追加し、QOL※や安全性などを評価しました。
その結果、免疫細胞療法を追加したグループと、放射線化学療法のみのグループとの間で、QOLに有意な差は認められませんでした。
一方で、免疫細胞療法は良好に忍容され、重篤な毒性は認められませんでした[4]。
【論文紹介5】進行メラノーマに対するTIL療法とイピリムマブの比較
【論文】Tumor-Infiltrating Lymphocyte Therapy or Ipilimumab in Advanced Melanoma
【研究機関】オランダなど/海外
【研究概要】
2022年に発表されたこの研究では、進行メラノーマ患者168人を対象に、TIL療法とイピリムマブを比較し、治療効果だけでなく健康関連QOLも評価しました。
その結果、TIL療法を受けた患者では、イピリムマブを受けた患者と比べて、全体的なQOL、身体機能、精神面の機能が高い結果となりました。
また、疲労、痛み、不眠などの症状も少ない傾向が認められ、こうした差は治療後60週の時点でも確認されました[5]。
なお、TIL療法も免疫細胞療法の一つですが、腫瘍から採取したリンパ球を培養して投与する治療で、治療前のリンパ球除去療法や高用量IL-2投与を伴います。
当院で行っている免疫細胞療法とは治療方法が異なります。
【論文紹介6】スキルス胃がん患者のQOL改善
【論文】A patient with scirrhous stomach cancer treated with combination of hyperthermotherapy and 5-aminolevulinic acid (ALA)
【研究機関】瀬田クリニックグループ/日本
【がん種】ステージIVスキルス胃がん
【研究概要】
35歳女性の進行胃がん患者1例について、化学療法、温熱療法、ALA・DCA、免疫細胞療法を組み合わせた治療が行われました。
その結果、11か月間、病状の進行がみられず、QOLが著明に改善し、仕事に復帰したことが報告されています。生存期間は1年7か月でした。
複数の治療を組み合わせた1症例の報告であり、免疫細胞療法単独の効果を示すものではありません。[6]
【まとめ】
2回にわたり、免疫細胞療法について報告されたさまざまな研究をご紹介しました。これらの研究からも、免疫細胞療法については、治療効果だけでなく、QOLや身体状態、治療後の経過など、さまざまな視点から考えていくことが大切だといえます。
※クオリティ・オブ・ライフ(QOL):生活の質。身体的・精神的な状態や日常生活などを含め、患者さんの生活全体の状態を評価する考え方。
【参考文献】
[4]Multhoff G, Seier S, Stangl S, et al. Targeted Natural Killer Cell-Based Adoptive Immunotherapy for the Treatment of Patients with NSCLC after Radiochemotherapy: A Randomized Phase II Clinical Trial. Clin Cancer Res. 2020;26(20):5368-5379. doi:10.1158/1078-0432.CCR-20-1141.
[5]Rohaan MW, Borch TH, van den Berg JH, et al. Tumor-Infiltrating Lymphocyte Therapy or Ipilimumab in Advanced Melanoma. N Engl J Med. 2022;387(23):2113-2125. doi:10.1056/NEJMoa2210233.
[6]Saito M, Yano K, Kamigaki T, Goto S. A patient with scirrhous stomach cancer treated with combination of hyperthermotherapy and 5-aminolevulinic acid (ALA). Anticancer Res. 2013;33(7):2957-2963.

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【がん免疫細胞治療とは】
がん免疫細胞治療とは、身体のなかでがん細胞などの異物と闘ってくれる免疫細胞を患者さんの血液から取り出し、人工的に数を増やしたり、効率的にがんを攻撃するよう教育してから再び体内へ戻すことで、免疫の力でがんを攻撃する治療法です。
【リスク・副作用について】
免疫細胞治療は患者さん自身の免疫細胞を治療に用いるので、軽い発熱、発疹等が見られる場合がありますが、それ以外は重篤な副作用は見られず、身体への負担がほとんどありません。
【費用について】
治療にかかる費用は、1クール(6回投与)実施の場合、治療法にもよりますが、およそ1,800,000円(税込1,980,000円)~3,943,700円(税込4,338,070円)が目安となります(検査費用は除く)
※がん免疫細胞治療は自由診療(自費診療)です。健康保険は利用できません。
