LSI札幌クリニックNewsline

膵臓がんについて

日本人の死因の第一位を占めている “がん ”の中でも極端に5年生存率が低く治りにくいがんが「膵臓〈すいぞう〉がん」です。

膵臓は、がんをはじめとして何か異常があっても発見が難しく、「沈黙の臓器」と呼ばれています。その理由としては次の2つが挙げられます。

  1. 初期の頃はあまり症状が出ない

初期の頃は多くの人が無症状で自覚症状も出にくいため、気づいた時にはすでにステージ(病期)が進んでいる進行がんであることが多い。

  1. 膵臓の場所

下の画像のように、膵臓は他の臓器に囲まれたお腹の深いところにあります。そのため、初期の段階でがんを見つけることは困難とされています。

 

 

 

 

 

 

 

 

5年生存率とは、あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標で、あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合を指します。

国立がん研究センターより、膵臓がんの5年生存率は他のがんに比べ最も低く、ステージが進むにつれてその確率が著しく低下することも発表されています。(表1:膵臓がんステージ別5年生存率)

膵臓がんの5年生存率は全ステージを通しての数値が12.5%※1と数年前よりは少しずつ上昇はしているものの肺がん(34.9%)、大腸がん(71.4%)、胃がん(66.6%)と比較すると著しく低い値となっています。

※1,表1:国立がん研究センターがん情報サービス

 

膵臓がん年齢階級別罹患数を見てみると、

罹患リスクは50代から高まり、60代で一気に増加します。

国立がん研究センターがん情報サービス

 

膵臓がんの発生因子としては、次のような因子があります。

  • 血縁のある家族に膵臓がんになった人がいる
  • 糖尿病や慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)にかかっている
  • 喫煙や飲酒、肥満などの生活習慣

膵臓がんのリスク因子については詳しくは「膵臓がんの危険因子について」をご覧ください。

 

高齢になるにつれて罹患リスクは高まり、がんが進行すると生存率は極端に下がるため、早期発見が重要となります。

初期段階で見つかれば生存率も上がります。

腫瘍サイズが1cm以下であれば、5年生存率は80%以上との報告もされています。

しかし、厚生労働省が推奨するがん検診には「膵臓がん」は入っていないのが現状です。

推奨であれば職場や各市町村の健康診断が1つの“きっかけ”となります。

一方で膵臓がんはその”きっかけ”の大半が「症状」なのです。

実際、膵臓がんが発見された人の半数(50.8%)は、何かしらの症状が出て、初めて医療機関を訪れています。※2

※2 : 国立がん研究センターがん情報サービス

 

「症状がないからまだいいや」「自分は大丈夫」ではなく、「リスク因子に当てはまるから」「リスクの高い年齢になってきたから」など症状が出る前に膵がん検診を受診する“きっかけ”としていただければ幸いです。

膵臓を観察するために一般的に健康診断で用いられているのが腹部超音波検査です。

しかし、膵臓は深いところにあり脂肪(体格)や腹腔ガス(胃や腸の中のガス)の影響を受け見えにくく評価が難しい場合があります。

 

受診者A、受診者Bというお二人の超音波画像、MRI画像を例に説明します。

下の画像は、超音波画像で膵臓を写し出したものです。(赤線で囲んだものが膵臓)

受診者Aはきれいに描出されています。

受診者Bは途中から胃のガス(黒くなっている部分)により一部しか観察できません。

このような場合、超音波検査のみだと「膵臓不明瞭」となり正確な診断が難しいです。

では、MRIではどうでしょうか。

MRIでは脂肪(体格)や腹腔ガス(胃や腸の中のガス)の影響を受けずに膵臓の評価が可能となります。

 

このようにMRIを利用した膵臓がん検査が早期発見には有力とされています。

MRIを利用したMRCP検査は、膵臓がんそのものを明確に診断することができます。

また、膵臓がんを合併するリスクの高い疾患(膵管内乳頭粘液性腫瘍や膵のう胞など)も、鋭敏に捉えることができる優れた検査です。

これらの疾患は、通常のPET検査で見つけることは困難な場合もあります。

LSI札幌クリニックでは2020年よりMRIと超音波検査を利用した膵臓がん検診を行っており、膵臓がんの早期発見に尽力しています。

早期発見に繋げるためには定期的な検査が必要不可欠です。