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PET検査を受けているから胃カメラはしなくて大丈夫?

 人間ドックでよくある質問に「PET検査を受けているから胃カメラはしなくて大丈夫ですよね?」と言うのがありますが、残念ながらPET検査は胃がんのスクリーニングにはなりません。胃がんのスクリーニングにはピロリ菌の感染歴検査とその結果次第での内視鏡検査をお勧めしています。

胃はブドウ糖を代謝するので集積が重なってしまう

 なぜPET検査が胃がんのスクリーニングにならないのか?それは胃の生理的機能に加え、胃がんの病理組織と進展形式に関係します。人間の胃は非常に活発に活動することがありその時には多くのブドウ糖を消費します。問題は胃の運動を自分ではコントロールできないことでPET検査のためのFDGを注射した後約60分間に胃が動いてる場合にはその部分にFDGが集積するため、たとえ異常集積があったとしても重なってしまい見えなくなってしまうのが大きな理由の1つです。人間ドックなどでPET検査を行うと8割以上の症例で胃に集積を認めます。これらはほぼ全てが生理的機能を反映する集積でありたとえ悪性腫瘍が存在していたとしても腫瘍部分の集積は上記の理由で見えないことが多くFDG PET/CT検査の所見は全くと言っていいほど役に立ちません。

胃がんは細胞密度が低いことが多い

 もう一つの理由は多くの胃がんでは粘液細胞型の悪性腫瘍を形成することが多く、これらは細胞密度が低いためたとえがん細胞にFDGが集積しても集積の密度が低くPETでとらえることができないと言う問題。さらに、非常に悪性度の高い胃がんではがん細胞が胃粘膜の表面に沿って薄く進展するためこちらも集積の密度が低くPET検査で異常集積としてとらえることができないためです。もちろん全ての胃がんがこのようにPET検査で検出できないのかと言うとそうではなく、ある程度の大きさに進行した胃がんでは検出することもできます。しかし内視鏡でのみ検出できるレベルの早期癌と言うことになると上記の理由からPET検査で検出することはほぼ不可能と言ってもいいと思います。胃がんのスクリーニング検査の目的は手術して治癒させることのできる早期胃がんを見つけることですからその意味では内視鏡とPET検査に圧倒的な検出力の違いがあります。

ピロリの感染歴が重要

 現在ではピロリ菌の感染が胃がんの原因であることが判明しているため、感染歴の無い人は無理して胃カメラを受ける必要はありません。しかし、感染歴のある人は除菌の有無にかかわらず定期的な内視鏡検査をおすすめしています。