LSI札幌クリニックNewsline

免疫細胞療法と生活の質(QOL)①

今回は、免疫細胞療法が生活の質(QOL※)についてどのような報告があるのか、実際の論文を踏まえて医療ブログにいたしました。

がん治療の効果と生活の質(QOL)

がん治療というと、「がんがどれだけ小さくなったか」という抗腫瘍効果を、まず思い浮かべるかもしれません。
もちろん、これは治療を考えるうえで大切な指標です。

ただ、腫瘍への効果と同じくらい重要なのが、治療を受けながらどのような日常生活を送れるかという「QOL(生活の質)」です。

今回のブログでは、免疫細胞療法を受けた患者さんについて、QOL、身体機能、症状、精神面、治療への受け止め方など、さまざまな側面を評価した研究について、実際の論文を引用しながら紹介します。

クオリティ・オブ・ライフ(QOL):生活の質。身体的・精神的な状態や日常生活などを含め、患者さんの生活全体の状態を評価する考え方。


【論文紹介1】胃がんに対する免疫細胞療法
【論文】Adoptive Immunotherapy for Gastric Cancer


【研究機関】川崎医科大学/日本

【研究概要】
この研究は、治療が難しい胃がん患者50人を対象に、免疫細胞療法を実施し、治療効果や生存期間だけではなく、患者さんのQOLも評価しています。「免疫細胞療法を受けた患者さんのQOLを実際に測定したところ、一部の機能面で改善が確認された」という結果が報告されています
また、免疫細胞療法の投与による重篤な副作用は認められませんでした。[1]。

ただし、この研究は比較対象となるグループを設けた研究ではないため、QOLの変化が免疫細胞療法そのものによるものかどうかについては、慎重に考える必要があります。


【論文紹介2】樹状細胞ワクチン療法中の高いQOL
【論文】High Health-Related Quality of Life During Dendritic Cell Vaccination Therapy


【研究機関】ラドバウド大学医療センター/オランダ

【研究概要】
2020年に発表されたこの研究では、進行前立腺がん患者21人を対象に、樹状細胞ワクチン療法を行い、患者さん自身が回答するQOLや症状について評価しました。その結果、治療中から治療後6週間まで、QOLは高い状態を維持していました。さらに、画像上で病気の進行が認められず治療を継続した一部の患者では、登録から1~2年後にもQOLは治療前後で大きく低下せず、高い状態が維持されていました。[2]。


【論文紹介3】全身療法と併用した免疫細胞療法の有効性

【論文】Efficacy of Adjuvant Immune-cell Therapy Combined With Systemic Therapy

【研究機関】瀬田クリニックグループ・順天堂大学次世代細胞・免疫治療学・LSI札幌クリニック/日本

【研究概要】
こちらは当院も参加した研究です。
この研究は、肺がん、胃がん、膵がん、大腸がん、乳がんなどの固形がん患者141人を対象に、免疫細胞療法と全身療法を組み合わせた治療について調べました。

その結果、治療開始時のパフォーマンス・ステータス(PS)が0(まったく問題なく活動でき、日常生活を制限なく行える状態)であることが、良好な予後因子であることが示されました。こちらはQOLを直接評価した研究ではありませんが、免疫細胞療法を受けた患者さんの身体状態と、その後の経過との関係を示した研究です[3]。


【まとめ】
今回は、免疫細胞療法について、QOLや身体機能、症状などを評価した研究をご紹介しました。
免疫細胞療法の研究では、治療効果だけでなく、患者さんの生活や身体の状態など、さまざまな視点から評価が行われています。

これらの研究には研究デザインや対象者数などの違いがあり、必ずしもQOLを一律に判断できるものではありませんが、一つの参考と見ていただければ幸いです。

【参考文献】
[1]Yamaguchi Y, Katata Y, Sano F, et al. Adoptive immunotherapy for gastric cancer using zoledronate-activated killer cells: A prospective observational study. Mol Clin Oncol. 2020;13(5):55. doi:10.3892/mco.2020.2125.

[2]Westdorp H, Creemers JHA, van Oort IM, et al. High Health-Related Quality of Life During Dendritic Cell Vaccination Therapy in Patients With Castration-Resistant Prostate Cancer. Front Oncol. 2020;10:536700. doi:10.3389/fonc.2020.536700.

[3]Takimoto R, Kamigaki T, Okada S, et al. Efficacy of Adjuvant Immune-cell Therapy Combined With Systemic Therapy for Solid Tumors. Anticancer Res. 2022;42(8):4179-4187. doi:10.21873/anticanres.15918.

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【がん免疫細胞治療とは】
がん免疫細胞治療とは、身体のなかでがん細胞などの異物と闘ってくれる免疫細胞を患者さんの血液から取り出し、人工的に数を増やしたり、効率的にがんを攻撃するよう教育してから再び体内へ戻すことで、免疫の力でがんを攻撃する治療法です。
【リスク・副作用について】
免疫細胞治療は患者さん自身の免疫細胞を治療に用いるので、軽い発熱、発疹等が見られる場合がありますが、それ以外は重篤な副作用は見られず、身体への負担がほとんどありません。
【費用について】
治療にかかる費用は、1クール(6回投与)実施の場合、治療法にもよりますが、およそ1,800,000円(税込1,980,000円)~3,943,700円(税込4,338,070円)が目安となります(検査費用は除く)
※がん免疫細胞治療は自由診療(自費診療)です。健康保険は利用できません。