世界の免疫療法研究(免疫サイクル)

前回の記事では、
がんと免疫の関係を説明する上で重要な免疫の歯車(がん免疫サイクル)について紹介しました。
過去ブログ(免疫細胞療法と免疫チェックポイント阻害薬の違いとは?)はこちら>
この免疫サイクルでは、
①樹状細胞(司令官)
②T細胞(主役)
③免疫チェックポイント(ブレーキ)
という3つの免疫の働きが重要であり、それぞれに対応した免疫療法の研究が世界中で進められています。
今回は、その中から論文や症例報告として発表された研究をご紹介します。

【論文紹介1】
ネオアンチゲンを認識するTIL療法による転移性乳がんの症例報告[1]
【実施国】アメリカ
【がん種】ステージ4転移性乳がん
【関係する歯車/使用した免疫療法】
②T細胞
腫瘍浸潤リンパ球療法(TIL療法)
(ネオアンチゲンを認識するTILを用いた治療)
③免疫チェックポイント
ペムブロリズマブ(キイトルーダ)
【研究概要】
Stage IV転移性乳がん患者1人に対して、
腫瘍に生じた遺伝子変化から免疫が認識できるがんの目印(ネオアンチゲン)を見つけ、それを認識する患者自身のT細胞を選択・増殖して投与しました。
さらに、ペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害剤)などを組み合わせた治療が行われました。その結果、完全奏効(CR)となり、その効果は22か月以上持続したと報告されています。
【論文紹介2】
ネオアンチゲンワクチンによるメラノーマの臨床研究[2]
【論文】
Ott PA, et al. An immunogenic personal neoantigen vaccine for patients with melanoma. Nature. 2017.
【実施国】アメリカ
【がん種】メラノーマ
【関係する歯車/使用した免疫療法】
①樹状細胞
(ネオアンチゲンペプチドワクチン)
③免疫チェックポイント
ペムブロリズマブ(キイトルーダ)
※一部の患者で追加投与
【研究概要】
メラノーマ患者6人に対して、腫瘍の遺伝子解析から患者ごとのネオアンチゲンを選択し、個別化ペプチドワクチンを作製・投与しました。
その結果、全ての患者でネオアンチゲンに対するT細胞応答が確認されました。
ワクチン投与後に再発した一部の患者では、ペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害剤)を追加投与し、完全奏効(CR)が報告されています。
【まとめ】
今回ご紹介した論文では、
・樹状細胞ワクチン(ネオアンチゲン)
・腫瘍浸潤リンパ球療法(TIL療法)
・免疫チェックポイント阻害剤
など、それぞれ異なる免疫の歯車に着目した治療が報告されています。
いずれも限られた症例数を対象とした研究報告であり、必ずしも同様の効果があるとは限りませんが、世界では免疫サイクルの働きに着目した研究が進められています。
【参考文献】
[1]Zacharakis N, et al. Immune recognition of somatic mutations leading to complete durable regression in metastatic breast cancer. Nature Medicine. 2018.
[2]Ott PA, et al. An immunogenic personal neoantigen vaccine for patients with melanoma. Nature. 2017.
